イノシシのお母さんはシングルマザーで子供が五匹います。二匹は里子で三匹はもえちゃんのお家にいます。
もえちゃんがいつも気になっているのは、イノシシのお母さんはツラいと思うことは無いのかなってこと。
だって、お母さんはイノシシ、お父さんはハウスピッグで、うり坊たちが生まれてしばらくして、何にも言わないままに姿を消しました。同じウシ目、イノシシ科でも、全然育った環境も違うし、ハウス育ちの豚に野生の暮らしは辛かったかもしれません。
「でも、酷い男だったよね。突然いなくなって」
もえちゃんは思わず本音を言いました。
お母さんは言いました。
「もえちゃんね、そういう考え方は自分を不幸にするだけじゃなくて、周りも不幸にするのよ。自分の価値で善悪や優劣を決めずに、ありのままを見なさい。私が不幸に見える?私が彼をなじったことある?」
「えー」
もえちゃんは何も言えませんでした。
イノシシのお母さんは確かに幸せそう。でも、でも、普通の家庭よりはツラいんじゃないの?
ミッシェルはそんなこと、どうでもよさそうにイノシシのお母さんにまたがってくつろいでいます。
自分の価値観で、お母さんを可哀想だと思ったけど、もしかしたら自分は傲慢だったかもと反省したもえちゃんでした。
そうですね、自分の理解できることなんて、この世ではほんの少し。