日本のお客様を中国の方々に紹介しているうちに、中国のお取引先のお嬢様がこちらの社長に電話して、
「うちのどの商品が欲しいですか?」
と聞いたら、
「貴方が欲しい」
と彼女は応えた。
「えっ!?」
人生で女性にお金以外の理由でモテたことの無い彼は、冷や汗を流した。
そうこうするうちに、お嬢様がホテルに来るとメッセージを残して社長も社員も真っ青になった。
ヤバイ。
お取引先だから、そそうがあってはいけない。
「社長、日本に妻と子供がいると主張してください」
青ざめる社員。
「そんなものはとっくにした!」
「実はゲイだと言ってください!」
「言ったら、美少年も連れてくると言われた!!」
などと、社内騒然。
結局、H&Mで二千円のドレスを買い求め、そのドレスを私が着て、急遽私が愛人に扮することになった。
ホテルのバーでキャバ嬢宜しく社長の隣に座る私を見て、お嬢様は日本人はいつもどこで買い物をしたらそんなにエレガントになるのかと尋ねた。
「シャネルよ。オンナのエレガントは
シャネルがデザインするの」
とでまかせを言うと、お嬢様はシャンパンを頼み、シャネルに乾杯とシャンパンを一気に飲み干して去っていった。
嵐が去り、不要になったH&Mの二千円のドレスは私へのプレゼントとなり、私は心の中でココシャネルにごめんなさいと言って土曜日の夜は幕を閉じた。
太陽光の下だといかにも安い。