人物画を描くとどこか自分に似る。
それは、鏡で見慣れた自分の顔を、脳が覚えているからだと先生に習った。無意識に見ているものを、絵描きは描くのだと。
絵描き仲間の描くある絵が気に入らないと思っていた。
その人の描く人物画は、特に優しそうな女性の絵が素敵なんだけど、女性の横顔を描く時だけ、なんだか頑固そうな横顔になってしまうのだ。
シャイな絵描き仲間は、最前列に座ることなく、いつも私の斜め後ろに座っていた。
絵が上手なので、何枚か絵を貰っては喜んだ。ただし、横顔以外。
その人とは連絡先も分からなくなって何年も過ぎたけど、
なんで、こんなに絵の上手な人が、横顔だけダメなんだろうという疑問だけが残っていた。
ところが、
昨日、仕事で自分を左斜め後ろくらいから撮った写真を見て驚いた。
私の顔は左半分が右半分よりもエラが張ってるので、写真を撮るときは右半分だけをとってきた。
だから、初めて自分の左側から撮った写真をマジマジと見た。
驚いた。
私の嫌いだった、横顔のあの絵にそっくりな骨格。頑固そうな。
どうして、才能豊かなあの人があんなダメな横顔の絵を描くのか疑問だった。
全く気が付きもしなかった青春のあの頃、
あの人は私に悟られないように、そっと、後ろから、私を見ていた。
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横顔
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