夢を見た。
ムーランの親友となって、一緒にトルコ族と戦う夢だった。
ガサツで、社会では受け入れられなかった私達の唯一生きられるのは皮肉にも戦場だった。
泣き虫な彼女は強かった。
何よりも、誰よりも生きることに真剣だった。
戦争が終わる頃、彼女は隊長だった王子について宮廷へ入ってしまった。
自分はというと、また根無し草で子ども達に剣を教える仕事で日々を賄った。
恋人は現れては消え、現れては消えた。与えられた何かを受け入れられない性分が自分を孤独へと追いやっていることを学ぶ頃には女として年を取り過ぎていた。
ある日、御輿がやってきて扉が開くと美しい高貴な姿の女性がこちらを見ていた。
見知らぬ貴婦人に自分の名前を呼ばれたので驚いたが、声でそれがムーランだとやっと分かった。
どうしたの?
と、聞くと、彼女は宮廷へ入って幸せになったので、自分にもいい縁組を用意しているから宮廷へ入るように言った。
とんでもない。
と首を振った。
自分には合わない。
それが貴女の為だから。
と彼女は微笑んだ。
瞳の奥は冷たく私を映していた。
そんなこと、望んでない。
と応えると、
いつまでそんな惨めな暮しをするの?
と彼女は言った。
私たちオンナは所詮オトコに寄生しないと生きていけない寄生蟲なのよ。
と彼女は呟いた。
突然辺りは暗闇になり、雷鳴が轟いた。
強い風が吹いた。
長い間一緒に闘ってきた彼女の闇を自分は何一つ理解していなかったと知った。
そんな。
そんな。
確かに、苦しい闘いの日々だった、でも、一生懸命生きたじゃないか。
泣きながら、命を懸けて。
馬鹿馬鹿しい強がりを言いながらも、弱虫だと自己嫌悪して、涙してたあの頃。
懸命に弱い自分と闘い続けた。
強くて、勇気があって、明るいムーランだったじゃないか。
そんな君を寄生蟲だなんて、誰がそんな心無いことを。
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蟲
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