【中国スパイ事件サマリー】
「解放軍、中国国安工作員に朝鮮系工作員か…うちみたいな数人しかいない会社によくもこれだけ出揃ったもんだ」
「いや、まだ登場してないビッグプレイヤーがいる」
マイケルは深田のため息を気にもせずにあっけらかんと答えた。
「スパイのビッグプレイヤー?」
「そう、ファーウェイだ。海外での中国の諜報活動には殆どファーウェイが絡んでる。CIA長官がキレたくらいだ」
そう言ってマイケルはニュースを見せた。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2013/12/post-3138_1.php
「そんな、大企業がうちみたいな弱小企業に付き纏うかな。エリちゃん、共同研究先に全部電話してファーウェイ来てないか問い合わせてくれる?」
「はい。分かりました」
深田はエリに声を掛けた。この会社を始める時から手伝ってくれているスレンダー美女だ。
ファーウェイ、中国名は華為。企業であって企業ではない。共産党直属企業なので、解放軍や国家よりも上位に属する。
中国は、中国共産党>人民解放軍>政府 という構造になっているので、通常の企業は法律の下位だがファーウェイは中国の法律よりも上位だということだ。
毛沢東は軍事力を強化する為に中国科学院を創立したが、鄧小平は工作活動を強化する道を選んだ。
それらは鄧小平が好んだ言葉、「巨大中華龍唐興為」を組み合わせて、巨龍、大唐、中興、華為の名前を冠した四社を共産党直属の諜報機能を兼ね備えた企業として創立した。
巨龍、大唐は倒産し、通信モジュールを取り扱った中興と華為は時代のトレンドに乗って成長を成し遂げた。
「ファーウェイは共産党配下だが、日本に来るのはファーウェイグローバルから派遣された台湾人。青幇の構成員だ」
マイケルが続ける。
「えぇ?共産党スパイの中身が台湾人なの?」
「本物台湾人ではない。青幇だと言っただろう。青幇は数百年の歴史がある暴力団で清王朝ですら討伐できなかった強力な暴力団だ」
「青幇は日本が上海占領の時に協力したんじゃないの?」
「戦時の青幇は、日本軍を助け、国民党軍を助け、共産党軍を助けた。三つの政府が戦えば、武器と敵軍情報の密売で、商売繁盛だからな」
「青幇は戦後途絶えたんじゃなかった?」
「青幇は戦後、共産党からの逆襲に遭って壊滅寸前まで追い込まれたが、蒋介石と組んで台湾占領に協力したんだ。残党は台湾で蘇り、国民党となった」
「青幇が何故今さら共産党に協力を?」
「儲かるからだ。青幇ビジネスは兵器売買と諜報活動だ。中国共産党は中国人を日本で諜報活動に当たらせる時に、中国人の立ち居振る舞いが悪過ぎて日本社会で警戒されることに気がついた。だから、中国大陸の血が濃くて日本文化の影響が強い台湾青幇を選んだということさ」
確かに中国人に日本人のフリは難しい。
「萌絵さん、大変です」
受話器を置いたエリが蒼ざめる。
「何?」
「共同研究先のN大三次元映像研究室にも、W大通信研究室にも、O大光学研究室にも全て弊社が訪問した一週間後にファーウェイが突然現れたそうです」
「ぬ、ぬ、ぬなっ!?」
「しかも、研究室に多額の寄付を積んだそうで、弊社との共同研究は白紙にしたいと」
「ヤラれたか…」
まさか、共同研究を始めようとしていた全ての研究室にファーウェイが現れていたとは。
深田萌絵の運命やいかに!?
続く