休憩^ - ^
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休憩^ - ^
第10回戦 追記
台湾での第二塁電信事業とはインターネット関連事業です。
1)存伝網路服務 保存及び伝送ネットワークサービス
2)存取網路服務 保存及び検索ネットワークサービス
これを抑えられたら、台湾でのネットの自由は程なくして中国の実効支配下になります。
アルファアイティーシステム社長、藤井一良からの訴え、第一回期日が始まった。
法人取引だったのに、藤井は私とマイケルを個人で訴えてくるという卑怯な手段を取ってきていた。
「法人取引だろうが」
契約書を読み返しながら深田は裁判所へ向かう準備をしていたが、肝心のマイケルの姿がない。
「エリちゃん、マイケルまだだよね?」
「いま、マイケルさんと電話中です」
エリは受話器を深田に渡した。
「マイケル、遅刻するよ。どこにいるの?」
「弁護士が行くから俺は行かなくていいだろ?」
「だったら私も行かなくていいよね?」
裁判所なんて、できれば行きたくない。
「ダメだ。殆どの弁護士は顧客を敵側に売るから、裏取引されないようにお前は出席しろ。あと、傍聴席に注意しろ」
そう言って、電話はプツリと切れた。
深田はガチャンと受話器を置き、
Facebookのアカウント見たら三つ将棋指しさんの名前のアカウントがあってどれが本物か分かりませんでした。
「マイケルさん、いったいどこに行っちゃったんでしょうね」
エリはタクシーでポツリと呟いた。マイケルと連絡が付かないなんて今までなかったことだ。
エリの言葉で深田は二十歳の頃のことを思い出した。
父親の会社が倒産した時、彼は何も言わずに失踪した。
何カ月も父のことを思ったり、なじったり、恨んだり、会いたいと思ったある日、深田は母にこう言ったのだ。
「お父さん、いったいどこに行っちゃったんだろうね」と。
母はすかさず、「どっかで生きてるん違う?ゴキブリ並みの生命力だから」と答えて「確かに」と思ったことを覚えている。
母と違って、深田は気が小さい打たれ弱い女だ。いつもクヨクヨしている幼少期だった。
そんな自分には とてもではないが、エリを励ます言葉なんて思いつかない。
「マイケル、ゴキブリ並みの生命力だから大丈夫だよ。ハハ」
深田はカラ笑いをしながら、オフィスのドアを開けた。
「ハロー!グッドモーニング!」
マイケルがスタバのラテを飲みながら、笑顔で二人を迎えた。
「おまえ!!このボケ!連絡も無しに何やってたんだよ!電話くらい出ろ!」
深田はすかさずマイケルにキレた。エリが「萌絵さん、大阪弁になってますよ。英語でお願いします」と深田をつついた。
「電話? 部屋に置きっぱなしだ。スマホはハッキングされ放題だからな。地球人は愚かだ。便利と引き換えに魂を売る」
「どこに行ってたのよ。台湾調査局だけじゃなくて、台北警察がジュディのところにマイケルの逮捕通知持って来たのよ」
「ジュディから聞いたよ。台湾調査局が俺を探して金曜日に来たということは、週明けには台湾国内の仕事があるから帰るだろう。だから、週末は隠れてたよ。軽井沢は素敵なところだった」
「か、軽井沢!?」
眠るに眠れず悪夢のような三日間を過ごした深田は、頭に血が上ってきた。
「だったら、ちゃんと説明しておいて!それよりも、今日こそ、過去に何があったのか系統立てて全部説明してよ」
「ノータイム。説明する時間なんかないぞ、これから外事警察に行く」
マイケルはラテを持ったまま、表でタクシーを拾った。
東京メトロ桜田門の出入り口すぐ横に警視庁がある。
バリケードの横に立っている警備員とエリが少し話をすると中まで案内された。
外事二課の陣内刑事と部下の久保田刑事が迎えてくれた。
「深田さん、どうしたんですか?」
「あの台湾調査局が藤井との裁判に現れて、その後、うちまで付けてきていたんです」
窓の無い部屋で刑事と話すのは少し緊張する。
「藤井の裁判に・・・」
これまでの経緯を知る陣内と久保田は顔を見合わせた。
「深田さん、どうして台湾はそこまでするんですか。私たちは、ちょっと理解できないんです」
久保田さんは正直にそう答えた。当然と言えば、当然だ。
フッとマイケルを見ると、いつもニコニコしている彼は沈痛な面持ちで語り始めた。
「私は、米国でJSF計画(統合打撃戦闘機)で無人戦闘機向けに遠隔操作技術の開発を行なっていました。そこで、私の技術に目を付けたのが中国の国家安全部と人民解放軍です。全てはそこから始まりました」
二人の刑事は信じられないという顔で目を見合わせた。
「その事件まで米国政府は台湾を親米国家だとみなしていました。その為、チップの製造を台湾大手半導体メーカーTSMCに委託したのです。私はTSMCの社長と何度も会いました。そして、これは殆ど知られていないのですが、台湾の法律ではチップ設計の要ともいえるマスク(チップ製造の金型のようなもの)権利の帰属は工場となっていたのです。無論、米国政府もそこまで知らなかったのです」
「ということは・・・?」
「台湾は合法的に次世代型戦闘機の要ともいえるチップ設計を手に入れたのです」
そうか、台湾調査局が日本で諜報活動しても合法なように、台湾では他人が設計したチップを基にマスク(チップの型みたいなの)を起こした工場に権利を帰属させ、技術流出を合法化しているのか。
しかし、この米国最新戦闘機技術流出事件。台湾総統の馬英九が指揮を執り、Winbond社の社長とTSMCの社長が絡んでいるとは、あまりにも大き過ぎる事件だ。
http://www.tsmc.com/japanese/default.htm
「コーさん、すみません。その事件の犯人はTSMCだったということですか?」
「いいえ、犯人は一人では無い国際犯罪集団青幇という台湾に居る暴力団で、中国共産党に協力しているのです。台湾国民党は殆どが青幇に属しています。馬英九、Winbond社長焦祐鈞、TSMC創業者張忠謀も青幇の構成員なのです。台湾国民党が国策で半導体メーカーを立ち上げた時、運営は青幇に任されたからです。JSF事件は、ラファイエット事件と同じように、何百人と言う人間と政治家が絡んだ一大事件だったんです」
軍事技術流出事件には、各国の犯罪組織、企業、政治家と莫大な金が付きものだ。
「どうして、台湾調査局は日本にまで来たんですか?」
「それは、私が台湾で指名手配犯だからです」